「まだまだ着られる洋服を他の子に着てほしい」そんな親たちの想いを叶えるサービスがあります。「キャリーオン」は、フリマやオークションサイトと違い、ユーザーは洋服をまとめて送るだけ。その手軽さが忙しいママたちに人気となり、買取件数は60万件を超えました。
アパレルの廃棄を少しでも減らすために行う株式会社キャリーオンの取り組みについて、代表取締役を務める吉澤健仁さんにお話を伺いました。
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子供服に特化することで、徹底的に業務を効率化
はじめに「ママたち」のコミュニティにフォーカスした事業を検討している中で、「サイズアウトした子供服をシェアしたい」「買ってもすぐに小さくなってしまう子供服をリーズナブルに手に入れたい」というニーズがあると知り、子供服の古着を取り扱うことにしました。
大手が子供服の買取をやらないため、綺麗な状態の子供服がご家庭に眠っているのもチャンスだと思いました。実際に仕入れには困ることはなく、毎月数万着が送られてきます。
なるほど。ターゲットを絞ることで競合が少なくなるということですね。
同じアパレルでも、子供服とレディースの服では、野球とサッカーくらい違います。ですので、大人の洋服を取り扱いながら、片手間で子供服も扱うには割に合わないことが多くあるのです。
例えば、どのような違いがあるのでしょうか?
また、業務で工夫されているポイントはありますか?
大手の買取サービスが子供服を対象外にする理由は、
- 子供服はレディースに比べると単価が安くなりやすい
- 子供服独自のブランドやサイズ展開があり、知識が必要となる
- 子供服ならではのささげポイントがある
といったことが挙げられます。弊社は、子供服に特化することでそこにフォーカスした解決策を取っています。
例えば、二次流通でも値段が付くように買取ブランドは限定しています。いわゆるファストファッションは対象外です。取り扱いブランドは、ミキハウスさん、ファミリアさん、メゾピアノさんなどをはじめ500ほどですね。
子供服ならではの査定ポイントでは、タグに記名があったり、靴の中に砂が入っていたり、ポケットに何か入っていたりしますが、スタッフも見るべきポイントをよく分かっているので、検品の質も担保されています。
撮影は1時間に100着ほど行っています。レディースアパレルであれば、トルソーに着せ、タグやディテールなど複数の写真がないと売れないと思いますが、子供服の場合は表裏2枚の写真があれば大体伝わります。
これまでの査定ノウハウを活かして、子供服の全ブランドの全カテゴリーをデータベース化しており、自動査定の仕組みを導入しております。また、子供服専用の撮影スタジオや、自動の写真加工のシステム構築など、テクノロジーの力を使って、細かい改善の積み重ねですね。
裏表のみとはいえ1時間に100着は驚きです…。ブランドの絞り込みとプロの検品がされているので、ユーザーさんも安心して購入できますね!
新型コロナウイルスの影響で利用者が増加
新型コロナウイルスの影響で、リアルのフリマやバザー、店舗が一次的にストップしました。「キャリーオン」への影響はいかがでしたでしょうか?
ゴールデンウイーク前後から買取数が前年比の数倍になり、会員数は5万人を超えました。皆さん、自宅にいるのでクローゼットの片付けをする方が増えたのでしょう。買取ニーズがかなり増えたのに対し、保育園や小学校のお休みでスタッフのリソースが減ってしまい、さばけない状況をなんとか乗り越え、やっと落ち着いたところです。
この数年で、二次流通市場が非常に伸びましたが、どのような背景があるとお考えでしょうか?
一番ユーザーの意識を変えたのはメルカリさんだと思います。あげる・捨てる以外に、「売る」という選択肢があるのだとユーザーに気付かせたのは、メルカリさんの啓蒙のおかげです。(笑)
時間がある方、またキャッシュ化したい方はCtoCのフリマアプリを使い、ひとつひとつ出品するのが手間な方はCtoBtoCモデルの弊社といったように切り分けができているかなと思っています。
毎日来ても新しいアイテムと出会えるエンタメ性を重視
ママのコミュニティを意識されているとのことでしたが、どのような仕組み作りをしていますか?
買取の場合、ユーザーさんにはサイトのお買い物で使えるポイントかギフト券、現金で受け取るかを選んでいただきます。ポイントのほうがお得になるように設定をしているため、大抵の方がポイントに交換し、買取から購入へのサイクルが生まれます。小さくなった服を売り、大きなサイズを購入するといった流れで、ポイントによるシェアコミュニティができています。
また、新商品は毎日夜9時に500~1000点ほどのアイテムを一斉に販売開始しています。ユーザーさんは、24時間前から販売される商品をチェックできるのですが、1点モノなので時には先に購入されてしまうというゲーム性も含めて、宝物を見つけるようなかんじで楽しんでもらえたら嬉しいですね。
どんなユーザーさんが多いのでしょうか?
ある程度高単価のブランドに絞ったということもあり、初めはいわゆる都心の富裕層が多いかと予想していましたが、実際はそんなことはなく、世帯年収や地域によって差がないことがわかりました。子どもの中でも「洋服」にかけるご家庭は様々で、祖父母などお財布の数も影響しているようです。
SNSではUGC(User Generated Content)にも取り組んでいらっしゃいますが、どのような施策を行っていますでしょうか?
やはりママ向けのサービスということで、今はInstagramに一番力を入れています。#キャリーオンで検索をすると1万件くらい投稿されています。自社の投稿もありますが、コーデコンテストを開催し、ユーザーさんにも投稿をお願いしています。古着にはまだネガティブなイメージが付いていますが、「古着を子供に着せることはおしゃれなこと」という啓蒙をしていきたいと考えています。
YouTubeは先を見越して種蒔きをしている状態ですね。Instagramの写真なら数秒で見られますが、YouTubeは10分など時間を奪うツールなので、モノを売るという意味合いでは大きく、アパレルとして今後もっと大事な場になると思っています。
子供服ブランドとも取り組むSGDsの活動
御社はSDGsに対する企業メッセージを発信していらっしゃいますが、ユーザー側の意識に変化はありましたか?
企業として、SDGs、「服を捨てること」に対して社会の意識を変えていきたいと考えています。
SDGsに対して、ユーザー側の意識はまだまだ高くないかなと感じているので、我々のような会社が高めていかないといけないですね。まずは、「着られる服を捨てるのはもったいない」という気持ちからSDGsへ繋げていきたいです。そのためにも、手軽で便利なサービスを提供していきます!
これまで、一次流通のアパレルブランドと二次流通の中古事業者の間には壁がありましたが、最近は一緒にお取組みをすることもあるのですね。どんな取り組みがありますか?
ありがたいことに、子供服関連で何か新しいことをしたいとお考えのブランドさんから「キャリーオン」の名前を挙げていただくことが増えました。
例えば、新品を弊社が買取り、「キャリーオン」で新古品として販売しています。中には、新品にこだわるユーザーさんもいらっしゃるので新古品の数を増やすルートのひとつになっています。
他には、子供服回収キャンペーンを弊社が代行してやらせて頂いたり、子供服のレンタルサービス事業に商品を提供させていただいています。
キャリーオンには、ブランド側が持っていないデータを持っているので、マーケティングデータに期待をされるブランドさんからお声がけいただくこともあります。
例えばどのようなデータでしょうか?
そのブランドを買っていない方のデータや、どのブランドと一緒に合わせて買っているかといったデータです。アパレル廃棄を減らす上で重要なデータになるので、今後はこのあたりの取り組みにも力を入れていければ、SDGsへの取り組みに繋げられると考えています。
サステナブルな服作りになっていくと良いですね。
少子化やコロナウイルスなど様々な変化がある中、今後の展開についてはいかがでしょうか?
子供服市場はこの10年くらいずっと7,000億くらいで、増えてもいないし減ってもいない状態です。一方で二次流通市場は拡大してきているので、我々はその波に乗ってシェアを伸ばしていきたいと考えています。
必要とされる未来、例えば「服を捨てない」「まだ着れる服を他の方へ」といった流れは確実に伸びると予測しているので、そこを見越して今やるべきことをやっていきたいですね。
「洋服は新品で購入して捨てる」というのが当たり前ではない世の中になってほしいので、弊社のサービスもそれに沿った事業にしていきます!
本日はお忙しい中ありがとうございました。
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初めに「キャリーオン」のサービスについて教えてください。
オンラインの古着買取サービスはいくつかありますが、例えばZOZOUSEDさんやブランディアさんでは、子供服の取り扱いがありません。一般的に成功しにくいと言われている「子供服の古着」に特化した理由はどこにありますか?