浮いたコストで“人の脳味噌”を使え。企業の可能性を広げるオートメーションの形

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Amazonや楽天市場、ZOZOTOWNなど、ECでの買物シーンを思い浮かべてほしい。商品をクリックし、説明を一読。商品画像をスワイプしたり拡大したりして、あらゆる角度からチェックし、カートに入れる……。

我々も承知の通り、商品写真なしにECでの買物は困難だ。これはメーカーや流通にとって、商品写真が売上を大きく左右することを意味する。

こうした商品写真の裏側を“地球規模”で下支えする、ポーランド発の自動撮影システムがある。国内ではオービットブイユージャパンが提供する『Photo Automation(以下・フォトオートメーション)』だ。

世界の中でもトップ3に入る勢いで日本の売上を伸ばしているという、同社の執行役員・梅谷知宏氏に、撮影の自動化システムや、導入によって広がる企業の可能性を尋ねた。

1ヶ月の作業が3~4日に!?スピード勝負の現場でも重宝

同社のシステム導入事例にはワールド、ジュン、ワコールをはじめとした大手メーカーや、西松屋チェーン、ライトオンなど数々の有名企業が並ぶ。アパレル以外にも、繊細なジュエリーを扱う企業や日用品、家電にいたるまで、あらゆる商品に対応できる幅広さがうかがえる。

ユーザー事例
同社webサイト ユーザー事例

商品を機材にセットすると、バッグのような立体的な商品であれば、前後・左右・上からと複数の角度から次々と写真におさめられ、トリミング・加工を経て、サーバーにアップされていく。ここまでの時間は、ものの2分程度。ライティングなど撮影の微調整はもちろん、画像の切り抜き加工やサイトへのアップまで、一連の作業をオートメーション化できる。必要要件ごとに出力すれば、複数の部署でのDB化も可能だ。

「順番通りボタンを押すだけで、これまで高いスキルが必要とされていた撮影・編集・加工業務を、誰でも簡単にできるようになります。5~6人で1ヶ月掛かる作業を、1~2人もいれば3~4日で終わらせられる。スピードは50倍になるという試算もあります。」

原稿の準備があれば、工場からサンプルが届きしだい即座にサイト掲載が可能になる。そのため、商品生産前の短期間で需要の予測が求められる予約商品など、スピード勝負のシーンでも重宝されている。

フォトオートメーションでの撮影作業
フォトオートメーションでの撮影作業

越境化で高まる、商品画像の“進化系”ニーズ

「日本ではまだまだ一般的ではありませんが、360°画像や動画の需要は、越境ECでは非常に高まっています。“なければ商品にならない”ということも多い。360°画像はもちろん、動画の編集までもシステム内でクロップすることも可能です」

Shopifyやmagentoなど世界でメジャーなECプラットフォームとの連携もカバーしているといい、「近いうち、“システムは全てのプラットフォームと連携できて当たり前”となるのでは」と今後のシステムの理想形を予測する。

「浮いた時間とお金を、どう使うか」までを一緒に考える

同社のシステムは効率化を求めて導入する企業が多いため、導入時には必ずKPIを設定している。

「導入自体を目的にすると、ただの高い買い物。1時間あたり何カットを処理するかなど、KPIは必ず設けます。さらに空いた人の手と時間で、何をしたいか。システムはマイルストーンのひとつです。

最も多いニーズは撮影のインハウス化ですが、他にも“今までなかったマーケティング部の設立”、“ロケ撮影のクルーを作る”など、企業・ブランドとしてどうありたいか、どう売りたいかを明確にしていただき、共に歩んでいきます。納品翌日から目標達成できるシステムにはなっていますが、それを一緒にドライブできるかどうかが大事なんです」

クライアント企業毎にチャートを作り担当者単位で、できるようにすることや、実際できるようになったかまでを管理し、責任者へ報告やミーティングを行う。上手くいかない部分は解決までのプロセスも全て記録し、それを見れば新入社員でもシステムを使いこなせるナレッジの集積が完成する。

「3ヶ月もすると、ほとんどの企業が達成できるようになる。自分に電話もこなくなるので、ちょっとさみしい」と梅谷さんは笑う。

オートメーションが叶えた、企業のポジティブな変化

撮影自動化による“浮いたお金と時間”の活用事例を尋ねると、BtoCでもBtoBでも、顧客に従来以上の付加価値の提供が実現していた。

あるアパレル企業は導入わずか1年の間に、EC単体の売上で前年比270%を達成したという。スタイリングにコストをかけられるようになり、単品だけでなくコーディネートで提案する“合わせ買い訴求”が功を奏した形だ。

機材を巧みにフル活用して、クリエイティブの幅を広げているシューズブランドもある。
「機材にカラーのシートを敷いて商品とプロップを置き、上にカメラを配置すれば、イメージカットも撮影できるんです。この写真が非常によくて」と、心躍る華やかな写真を見せてくれた。

Bridget Birkin Instagram
Bridget Birkin Instagram

システム導入を機に、顧客とのコミュニケーションを訪問やFAXといったスタイルからwebサイトを中心としたビジネスモデルに切り替えた卸売企業の事例もユニークだ。
「サイトを作り従来のやりとりが必要なくなったので、いつも通りの足を運ぶのが“スゴいこと”に見えるようになり、ロイヤリティが上がった。

“営業のセンスや長年の経験に基づいて売り方の提案に時間をかけることが可能になり、MDさんが頼ってくるようになった”という話も」

人は「人が介在するべき仕事、脳味噌を使う仕事」をすべき

「システムを売っておいてなんですが……“白バックの画像だけ”っていうのが、私はあんまり好きじゃないんですよ」と梅谷さんは話す。

「イメージカットがあるからこそ、欲しいと思ってもらえるじゃないですか。その次に商品画像を見る。“人間の主観に響く何か”が入り口で、白バックの画像でイマジネーションが広がるかというと、そうではない。つまり人間が介在しない限り、物の良し悪しの判断はつかない。

私としては空いた時間で、“これがかわいい・かっこいい”というメーカーの主観を打ち出すために、“人間の脳味噌”を使ってほしい。逆に使わなくていい部分は、オートメーションするに越したことはない。

人間にしかできない仕事をしていただくために、我々のようなテクノロジーがあると強く信じています」

あくまでも“人の介在”をゴールと捉え、そのサポートをしたいスタンスだ。

 

“効率化の先”が成長のカギ

「システム導入の“先の先”を考えられる企業様が、余った人と予算で、かなり面白いことをやっている」。

導入を皮切りに、クライアント企業から様々なニーズを日々キャッチする梅谷さんのもとには「海外展開したい」「新しい形の店舗を作りたい」と、幅広い要望が集まる。

「提供していないソリューションも多いので、商社的に知識を入れてお話ししています。“このサービスがいいですよ”とおすすめや紹介をすることも茶飯事。きちんとサポートできるよう、数社とコラボレーションし、営業研修もしていただいています」

 

シナジーを高めるため、強みを持つ企業とのアライアンスも積極的に行う。

「どの企業も、EC担当や決済者の方は決まっている。その方からひとつ相談が持ち込まれれば、ネットワーク的に正しい情報が伝わるようになると理想。

コンサルではないので、それぞれができることをやっていかなければ、大手に飲まれてしまう」

とどこまでもクライアント企業に寄り添う。本質に集中するため効率化に取り組み、その先で何にチャレンジすべきか。オートメーションのプロからの学びは大きい。

 

会社概要

会社名:オービットブイユージャパン株式会社

所在地:東京都品川区西五反田7-22-17 TOCビル8階

事業内容:ORBITVU社/自動撮影システムの販売とメンテナンス事業

https://photoautomation.jp